小説「失われた黄金都市」。科学と自然の共存を考えさせる作品!

こんにちは。ケンスケです。

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類人猿(るいじんえん)は英語で「ape」(エイプ)。
実は「ヒト」も類人猿に含まれるという説が一般的です。

ヒトの他には、オランウータン、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、テナガザルの種類が「類人猿」に含まれます。

とくに大型類人猿と呼ばれるオランウータン・チンパンジー・ゴリラは、ヒトに近いという理由で「手話」を教えることで、ヒトとコミュニケーションをとる研究がされていたことがありました。

今回紹介するマイクル・クライトンの【失われた黄金都市】では、手話のできるゴリラ「エイミー」が大活躍!

ヒトに育てられたゴリラは野生動物との架け橋になるのか?
科学の力は自然を超えられるのか?
動物を使役することの功罪。

などなど、みどころが満載に詰まった小説を紹介します。

小説「失われた黄金都市」。科学と自然の共存を考えさせる作品!

こんな人におすすめ!
マイクル・クライトンの壮大なスケールを読みたい!
冒険小説が好きな人
野生動物、地球環境に興味がある人。SDGsに興味がある人。
類人猿(とくにゴリラ)ファン。
小説にスリルを求める人。
映画「コンゴ」をオモシロイと思った人。

マイクル・クライトンの先見性が光る!

【失われた黄金都市】はどんな物語かというと・・・

一種の冒険小説!

優秀な調査会社の女性「ロス」が主人公です。
アメリカの調査会社の調査班がアフリカで何者かに襲われて全滅することから物語は始まります。

その調査団が探しているのが工業用に利用される希少なダイアモンド。
主人公の属する調査会社は、その時代の科学の最先端の機器を利用しながら、ダイアモンドの場所を突き止めます。

ライバル会社とも争いながら、未開の土地・ザイール(コンゴ)での冒険が物語の本筋です。

でも、ただの冒険小説ではありません。
なにせ、マイクル・クライトンはあの有名な「ジュラシックパーク」の原作者

【失われた黄金都市】が発表されたのは、なんと1980年。
今から40年以上も前の作品なんです。

その40年も前に、現代では当たり前になった衛生通信とコンピュータによるAIを駆使する姿を予想していたのです

目的地へのルート
ライバル会社より先に到着する確率
危険予測



などなど

40年以上前に現代では当たり前になった技術を予想していたと思わざるを得ない記述がたくさんでてきます。

なので、古い作品ではありますが、全く古さを感じない作りになっているんです。

しかも、おもしろいのがただ未開の土地を探索する冒険小説なのではなく、

文明
人類学
工業
動物愛護
動物行動学
アフリカにおける内戦

こ~んなにたくさんの要素を盛り込んで、おもしろい小説に仕上げてきます。

ちなみに【失われた黄金都市】は、発表から15年後の1995年、「コンゴ」として映画化されています。
メチャクチャおもしろい映画なので、小説を読んでからでもみてほしい作品です。

※著作のなかで国名が「ザイール」となっています。「ザイール共和国」は1971年~1997年まで用いられた国名で、現在は「コンゴ共和国」になっています。

自然の脅威と人類の科学との対決!

 

主に「冒険小説」として読んでいいと思います。
ですが、この作品にはいろんなテーマが散りばめられています。

そのひとつが、

自然の脅威!

野生動物との闘いはもちろんのこと、それに挑む人類の科学。
さらには、活火山の動向のなかにアフリカ各国における内戦事情を絡ませて物語を複雑化させています。

どんなに人類が科学を発展させたところで、地球規模の脅威を見せつけられるというテーマもみてとれます。

野生動物との共存を考えさせられる!

主人公・ロスたちの調査団に紛れ込んだのが、一頭のメスゴリラ。

エイミーと名付けられたそのゴリラは、霊長類の研究学者ピーターに育てられたみなしごでした。

実はこのエイミー、ピーターによって手話を教えられています。
人間によって育てられたので、野生動物とはいえません。

ただし種族は「ゴリラ」であるので、人間と野生動物との架け橋となりえるのか?という問題提起もなされています。

そして、主人公・ロスたちに襲いかかる謎の生物たち。
この生物たちも実は人間が関係していたのです。

【失われた黄金都市】では、随所に動物を人間の使役に利用することへの疑問を投げかけてきます。

類人猿はヒトにとても近い生物です。
類人猿に「人権」を認めるべきか?っていう問題提起もされているように感じました。

私がこの小説を読んでいて印象に残ったのは、「調査後のエイミー」です。
詳細は物語を読んでほしいのですが、余韻として心に残ったのを覚えています。

ロマンあふれる冒険小説

ロビンソン・クルーソー、十五少年漂流記、スティーブンスンの宝島などなど子供の頃に好きだった冒険小説。

この【失われた黄金都市】も冒険小説です。
限られた物資の中で、迫りくる脅威と闘いながらサバイバルしていく物語はドキドキの連続。

「未開の土地で古代文明の宝を探す!」っていう話は、昔から数多くあしました。
私が印象に残っているのは、「グーニーズ」や「インディ・ジョーンズ」。
どれも子供の頃にみた名作映画です。

【失われた黄金都市】も1995年に「コンゴ」という名で映画化されていますね。
小説を読んでおもしろいと感じた人はぜひ見てほしい映画です。


人類に育てられたゴリラの行動にも注目。

物語のみどころのひとつが、「手話のできるゴリラ」エイミー。
エイミーはメスのゴリラなのですが、その行動や言葉がかわいらしいのです。

エイミーは幼い頃から人間に育てられているので、ジャングルや野生動物に出会うのは初めて。
どんな行動をとるのかは、小説を読んでみてほしいのですが、緊迫した場面での愛らしいやりとりがいいアクセントになっています。

手話のできるゴリラというと「ココ」が有名です。
残念ながら2018年に亡くなってしまいましたが、ゴリラと人間が言語でコミュニケーションをとれるということを証明してくれました。

ココは自分がかわいがっていた猫を亡くしたときに「悲しい」と表現しました。
エイミーは映画の中で、自分が育てられたピーター(動物学者)に主人公のロスが近づくと激しく嫉妬しています。

人間に育てられているので全部の類人猿に当てはめることは難しいかもしれませんが、多くの類人猿にも私たち「ヒト」と同じような感情があるのかもしれませんね。

で、物語の最後にエイミーの「その後」の様子が語られています。
興味深いので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

「ココ」も載っている癒やしの動物フォトブック。かなりおすすめですよ!
⇒異種の動物たちが仲良し?!癒やしのフォトブック。びっくりどうぶつフレンドシップ

最後に。

この小説を初めて読んだのはいつだったか覚えていないのですが、改めて読んでみると、実におもしろい作り込まれた小説であることに気づきます。

著者のマイクル・クライトンは、本書の中で数多くの問題提起を行っているのです。

アフリカの抱える民族紛争の問題
科学の発展と地球環境問題
野生動物と人間の距離
動物愛護と研究の問題
自然の脅威とヒトの無力さ
人の欲望

まぁ、難しいことを考えなくても、そのまま冒険小説として読んでいくだけでもあっという間に一気読みできてしまう作品ですよ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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