こんにちは。ケンスケです。
織田信長が天下を目指す転機となった戦い、
「桶狭間の戦い」
あなたも御存知の通り、駿河の今川義元率いる大軍を織田信長軍が寡兵(少ない兵力)で破った戦闘です。
ただし!
歴史家の間では、この「桶狭間の戦い」は歴史ミステリーともいわれています。
○本当に奇襲だったのか。
○戦闘の場所は「桶狭間の丘陵」か「桶狭間のくぼ地」か。
○両者の兵力差はどれくらいだったのか。
○信長の進軍ルート
他にもまだまだたくさんの謎があって、現代でも歴史家の間で議論にもなっています。
誰もが聞いたことがるけれどミステリーの多い「桶狭間の戦い」を描いた小説
【空白の桶狭間】
歴史ミステリーは小説家の腕のみせどころ。
今回紹介する小説も作家・加藤廣独自の見解がすごくおもしろいですよ!
今回もネタバレなしで紹介していきます。
『加藤廣著の歴史ミステリー小説【空白の桶狭間】はおもしろい!』
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舞台は「桶狭間の戦い」
尾張国を統一した織田信長が一躍、有力大名になったきっかけとして有名な「桶狭間の戦い」。(1560年5月)
駿河国を治めていた今川義元が京都への上洛を目指して、通り道を確保するために尾張へ進軍したことで起こった戦闘です。
私の昔の認識では、
「今川義元軍は大軍であること、緒戦で簡単に勝利したことで油断していた。」
「桶狭間の谷間で酒宴を開いていた今川軍を急襲した。」
ということ程度だったのですが、現代ではいろいろな説がでてきているようですね。
○今川義元は大軍であったが、織田軍の3つの砦を攻めるために兵力を分散させていた。
○今川軍本陣と信長軍の戦闘は、「谷間」ではなく、「丘陵(山)」で行われた。
○今川義元ほどの武将が油断して、「谷間」で酒宴をするわけがない。(戦闘当時、豪雨と風が強かったといわれている)
○信長軍は3つの砦(鷲津砦・丸根砦・善照寺砦)をおとりにして、今川軍の兵力を分散させた。
○「桶狭間古戦場」は豊明市と名古屋市に2つある。どちらでも戦闘が行われた可能性がある。
○松平元康(のちの徳川家康)は大高城にいて、今川軍の救援に迎えなかった。
○暴風雨が信長軍に味方した。
○信長は今川義元が休息する場所を知っていた!(武田信玄が信長に情報を与えた可能性がある「甲陽軍鑑」)
「なぜ、織田信長は今川義元を討てたのか?」
今でも歴史ファンたちはこの謎を推測して楽しんでいます。
そんな「桶狭間の戦い」を木下藤吉郎の目線で描いている【空白の桶狭間】。
加藤廣は、誰も唱えなかったような説を掲げてきましたね。
内容については差し控えますが、「桶狭間の戦い」に至るまでの経緯、桶狭間でなにが起きたのか、誰もがご存知の人物の物語になっているので、わかりやすくて楽しみながら知っていくことができますよ!
主役は木下藤吉郎。
先に述べてしまいましたが、この本の主人公は「木下藤吉郎」。のちに豊臣秀吉として天下人になりました。
小説の藤吉郎は、信長軍のなかでやっと「足軽頭」になったところ。
算段が得意だった藤吉郎は城中の「炭」係。
【空白の桶狭間】では、若い藤吉郎が大活躍しますよ。
加藤廣作品が好きな人は、この物語は外せないでしょう。
後に加藤作品でも触れられる木下藤吉郎の出自が「桶狭間の戦い」に関係してくるのです。
この出自については他の作品でも重要な役割をもっていますね。
もうひとつ、おもしろいのが藤吉郎がねねと結婚するまでの話。
信長の妹「お市」に憧れていたのは有名な話ですが、そこに至るまでの物語もおもしろいです。
他の作品でも登場する人物たちにも注目!
清州城
男くさい小説の中で彩りを与えてくれるのが、「生駒吉乃」。
信長の側室で、跡取りの「織田信忠」「徳姫」「織田信雄」を生んでいます。
加藤廣の戦国ワールドでは、木下藤吉郎は生駒吉乃が仲介となって織田家に仕えることになっています。
詳しい経緯は、短編集【安土城の幽霊】に収録されている「藤吉郎放浪記」で語られています。
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生駒吉乃は、のちに荒木村重に嫁ぐ「多志」(だし)の母親(父親は吉乃の前夫)。
この「多志」は、作者・加藤廣氏のお気に入りで複数の作品で登場します。
生駒吉乃、多志、そして【信長の棺】でも登場する清玉上人。
この三人の物語にも注目して読んでみてくださいね。
さらに、もうひとつの注目ポイントは、
徳川家康の動向!
物語のなかの家康はまだ松平元康の時代。
いまだ今川家に隷属する身分でした。(今川家に人質として仕えていた!)
ただし!まだ幼い頃、織田家に預けられた時代があって、信長とも実は旧知の仲。
旧知の仲といっても、元康は信長を信用しているわけではありません。
こちらものちに天下人になったわけですが、この「桶狭間の戦い」における松平元康の動向にも目が離せません。
「桶狭間の戦い」後、松平元康(家康)が戦勝祝いに清州城へでかけた場面での
信長・秀吉・家康
三人の駆け引き。
他の作品にもつながってくるようなやりとりなので見どころのひとつですよ!
歴史小説の初心者でも楽しめる作品。
歴史ミステリーというと、歴史に詳しくないとよくわからん!と思いがちですが、普通に時代小説として読めば大丈夫!
おもな登場人物も
信長・秀吉・家康のほかには、今川義元、蜂須賀小六ぐらいでしょうか。
あとは、読みやすい文章なので物語中に入り込みやすいです。
本当は【信長の棺】【秀吉の枷】【明智左馬助の恋】を読んでおくと物語を理解しやすいといえます。
加藤廣作品は作品どうしもリンクしあっていることが多いので、「本能寺三部作」を読んだあとはどれを読んでも楽しめます。
基本的に時系列で物語が進んでいくので、圧倒的に読みやすいし、難しことも少ないので、歴史にあまり詳しくない方にもおすすめできます。
歴史に「ミステリー」があるから小説がおもしろくなる!
あくまで時代「小説」なので、史実がどうの~とかは気にしなくていいんじゃないかと思うのです。
小説を通して興味を持った人が、
「実際、史実はど~なの?」って思ったら、関連した書籍なりを調べていけばいいのです。
なので、小説は「エンターテイメント」として楽しみましょう。
とくに多くの人が知っているような人物や出来事を小説にするには、「分かっていること」の間の「わからないこと」をおもしろく想像して描かれます。
ってことは、歴史にあるミステリーが小説を面白くしているともいえますよね。
「わからないこと」っていうのは、人物の「空白」時間や心理状態、たがいの「思い」だったりするわけです。
そう、今回の【空白の桶狭間】。
だれの「空白」時間だったのでしょうか?
読んだあとに本のタイトルがしっくりくるんですね~。
読了後に、
チョ~スッキリ!!!
しますよ。
最後に。
最近、本は電子書籍で読んでいるんです。
ですが、この【空白の桶狭間】、電子化されていないんですよ!
なので、読むには紙の本を購入しました。
加藤作品の中でも結構、重要な役割を占めていそうなこの小説。
早いところ電子化してほしいです。
さきほど「初心者にも読みやすい」と述べましたが、実は歴史好きの詳しい方にもおすすめです。
織田信長で有名なのが、
○楽市楽座
○兵農分離
これらの政策が生まれた秘話も小説の中に混ぜ込んできているんですね。
おもしろいだけじゃなくって勉強にもなります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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