こんにちは、ケンスケです。
言葉をもたないゴリラは争いを好まない!
人間は言葉を得たことから争うようになった?!
ゴリラ研究の第一人者である山極寿一と【博士の愛した数式】など著書多数の小説家・小川洋子の対談をまとめた本。
一頭のオスゴリラがこちらをみている表紙がすごく印象的で、この本を手に取りました。
読む前は、完全に異種格闘技のような組み合わせで、
「本当に噛み合うのかなぁ」
な~んて思っていました。
読後はというと、
「納得!」
ふたりの会話がすごく噛み合って、私たち「ヒト」の本質をついてくるような話題に移っていきます。
ゴリラの生態や研究の話を期待して読み始めたはずですが、ふたりの頭脳が導いたのが「人間」についてだったのです。
「異種格闘技」だったはずが、全く別の世界へと連れて行かれた気分。
それでいて心地いいふたりの対談。
動物好きにも人類史に興味がある人も楽しめる本、
【ゴリラの森、言葉の海】
を紹介していきます。
『「ゴリラの森、言葉の海」ゴリラの生態をみながら人間の本質に迫る本!』
○ゴリラが好き
○類人猿の生態に興味がある
○人類史に興味がある
○言葉をうまくあやつりたい!
○山極寿一ファン・小川洋子ファン
ゴリラって優しい!?
今までなんとなく、「ゴリラって野蛮で強暴そう~!」ってイメージがありました。
でも、ゴリラを研究していた山極さんに言わせると、「争いを好まない。」のです。
私たちが威嚇行動だと思っていた、「ドラミング」と呼ばれる自分の胸を叩く行動も、実は争いに発展しないための意思表示だとか。
オスのゴリラは意外と「メンツ」を気にします。
ときにはそのプライドがケンカに発展してしまいそうなこともありますよね。
そんなときには、必ず仲裁が入って2頭をなだめます。
子育てにおいてもゴリラの人柄(?)が出ています。
生まれた赤ちゃんゴリラを最初はパパも触らせてもらえないんです。
ママの許しが出たときだけ抱っこさせてもらえます。
あんなに大きくて威厳がありそうなオスゴリラもメスには頭が上がらないんですね。
かといって、オスゴリラが頼りないわけではありません。
外敵が現れたときには、前線に出て群れを守ります。
この本ではゴリラの生態は、あまり多くは語られませんが、出てくるエピソードは私たちがもつ「ゴリラのイメージ」を覆してくれますよ。
私が読んだ印象は、「ゴリラを通して人間をみる!」ていうところでしょうか。
類人猿の研究者と小説家の対談
【ゴリラの森、言葉の海】は、山極寿一さんと小川洋子さんの対談がまとめられた本です。
ご存じの方も多いかもしれませんが、山極寿一さんは霊長類(サルや類人猿)の研究者。
ゴリラ研究の第一人者で、数多くのサルやゴリラの書籍を執筆しています。
もうひとりの小川洋子さん。
映画にもなった【博士の愛した数式】など著書多数。
受賞歴も多数あり、売れっ子の小説家です。
おふたりには接点があまりないように見えますよね。
専門とする分野も違います。
なのに!
二人の会話はよどみなく続き、話の展開は思ってもみなかった方向に展開していきます。
対談は小川さんが質問をして、山極さんがそれに答える形で進んでいくことが多いのですが、二人の話がおもしろい!
とくに私が興味をもったのが、屋久島での対談。
話題はもうゴリラから離れて、山極さんが屋久島を案内する場面です。
なんとなくゴリラが信頼した相手に秘密の場所を教えているような光景に微笑ましく感じてしまいました(笑)
言葉をもたないゴリラと言葉を話す人間
ふたりの対談はゴリラと人間を対比するところからスタート。
その後はゴリラとヒトが分岐した場面にまで話は展開していきます。
ゴリラの専門家・山極寿一さんが人類の進化について話し始めると、対談は一気におもしろくなります。
ヒトは言葉を獲得して、たくさんのモノを得てきました。
ですが、山極さんは言います。
「言葉で表現できないものがどんなに多いことか!」
そして、小川さんは、
「(小説家は)言葉にも置き換えられないはずの、人間の心を言葉で表現しようとしている」
言葉を操る専門家・小川さんも同じ思いを抱えていたのです。
ヒトは言葉を獲得し、「物語」や「詩」など虚構の世界を作り出したり、過去や未来を共有することができるようになります。
ただ、その一方で言葉は武器となって人を傷つけたり、戦争にまで発展させたりする可能性もでてきます。
ゴリラのパパは、言語を発しない代わりに
目で訴える!
&
背中(シルバーバック)で語る!
ゴリラは「言葉に置き換えられないもの」は語らないのです。
その代わり、意志や感情は鳴き声や態度で表現することができるんですね。
私たちからみると人間とゴリラは、「進化」したものと「進化」しなかったものとみてしまいがちですが、ゴリラからみれば、人間は「ゴリラと違う類人猿」ぐらいにしか思っていないのかもしれません。
実際に人間とゴリラは同じ祖先から枝分かれして別々に進化していった「近い親戚」みたいなものなのです。
人間が得たもの、失ったもの
↑気持ちよく眠るゴリラの寝顔は人間にそっくり!
今回の対談を読んで感じたのが、やっぱり「言葉」の役割。
表題にある「言葉の海」の意味が本全体を通して語られているように思います。
言葉を人間が使うことで、さまざまな学問や科学、医療は進んでいき、「生きる」ことが容易に、便利な生活を手に入れられるようになりました。
でも、言葉で表現できないもの、例えば愛情や母性、孤独や誇り、威厳などを伝えるのが苦手になっている自分がいる気がするのです。
私は動物園にもよく遊びにいきます。
ゴリラやオランウータン、チンパンジーといった類人猿の展示場にいくと、ガラス越しにジ━━━━━━ッとこちらをみてくることがあります。
↑人間に興味津々のチンパンジー
私たちはシャッターチャンス!とばかりにスマートフォンを構えますよね。
でも、あれってこちらが彼らをみているのと同時に、彼らも私たちを観察しているらしいのです。
↑人間を観察するオランウータンのオス
現代ではほとんどの類人猿たちの生息環境が減少してきています。
また、ペットとするための密猟もいまだに多くあるそうです。
人と類人猿は本当に近い動物どうし。
感情だってあるし、彼らの世界観もあるはず。
近い将来に絶滅危惧されていないことを祈っています。
最後に。
ゴリラの「ココ」ってご存知ですか?
手話のできるゴリラです。
人間が手話を教えて、人間のように育ったココ。
言語を覚えたゴリラです。
子猫をかわいがる姿は本当に人間のようです。
ただ、ココは人間に育てられているので、野生のゴリラと感覚が違っている可能性もあります。
ですが、野生のゴリラが子供のゴリラに接する姿をみているとヒトに近い親愛が感じられるのです。
人間もゴリラも、もちろん他の類人猿たちもみんな平和に暮らせる世界になれるといいなぁ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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