「本能寺三部作」の脇役を主役にした小説。加藤廣著【信長の血脈】

こんにちは。ケンスケです!

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【信長の棺】【秀吉の枷】【明智左馬助の恋】
作家・加藤廣の「本能寺三部作」を読破してから、ぜひ読みたかった作品をやっと読んでみました。

【信長の血脈】

4作品が詰まった短編集です。


短編ではありますが、

ひとつひとつがそれなりに読み応えあり!

「本能寺三部作」を読んだ方には、読みやすくて、おもしろい作品です。

「本能寺三部作」で登場した脇役たちが思い悩みながらも、時代や権力へと対応していく姿を描いた

「本能寺三部作 外伝」

のような小説です。

清州城とタイトル

『「本能寺三部作」の脇役を主役にした小説。加藤廣著【信長の血脈】』

こんな方におすすめ!
〇「本能寺三部作」を読んだ方
〇歴史に埋もれたエピソードが知りたい方
〇戦国時代のキリスト教の苦悩を知りたい方
〇戦国時代が好きな方
〇長編小説の息抜きを探している方

今回も「ネタバレなし!」でご紹介していきます。

★長編小説の取材で入手したエピソードを小説化

取材

著者・加藤廣さんは「本能寺三部作」を描くなかで、多くの取材をしていました。

ですが、本編では数行しか語られなかったようなエピソードがたくさんあったんですね。
本編の物語の流れ上、本筋から離れられず、埋もれてしまったエピソードがあったわけです。

「あとがき」からの引用
この文庫に収録した四つの短編の主人公は、置き去りがたく、捨て去りがたく思いながら、書き残した人物である。
・・・(省略)
騒乱の戦国では、この脇役あってこその英雄という事例は、あまた潜んでいる。それが歴史の「ほろ苦さ」であり、「隠し味」であり、また歴史小説の醍醐味であろう。

私たち読者は「自分が知っている人物」、「働きが派手だった人物」に注目しがちです。
ですが、これらを支えていたいわゆる歴史の「脇役」。

これを主役にしても、こんなにおもしろい小説が書ける著者の筆力は、驚愕です。

それでは、感じてください。

戦国時代の

いとしさとせつなさと心強さと~♪

★「平手政秀の証」

じいやイメージ

平手政秀とは、「織田信長のじいや」です。
養育係ですね。

ご存知の方も多いとは思いますが、一般的に知られる信長の若年時は「うつけ者」と呼ばれた暴れん坊。

〇手が付けられなかった信長をいさめるために政秀がとった行動の真意とは?

〇父・信秀の葬儀で信長が祭壇に向かって抹香を投げつけたエピソードにも裏があった!

〇信長の幼少期とその後の性格を形成していく過程を解明!

これらの謎が加藤廣ワールドでは、どんな解釈がなされるのか。
著者の解釈では今までの逸話からは全くかけ離れた結末。

信長と平手政秀の関係を解明していく新しい歴史小説のはじまりです。(新しくはないですが・・・。)

★「伊吹山薬草譚」

伊吹山

信長は覇権を握るとキリスト教を庇護します。これに割を食ったのが在来の仏教や神道。

信長は滋賀県にある「伊吹山」に薬草園を造成させる許可を出します。
もともと伊吹山には、奈良時代から薬草の生育に適した環境があり、平安時代もいい薬草が採れることで有名でした。

そこへ宣教師たちが南蛮由来の薬草園を開くことで、

外来種問題

が浮上します。

薬草

主人公は【信長の棺】、【明智左馬助の恋】でも登場する阿弥陀寺の僧侶・清如です。
清如の視点で描かれているのは、「伊吹山の薬草園」問題。

これに当時の医術者・曲直瀬道三(まなせどうざん)も加わって、「伊吹山薬草戦争」が勃発します。

〇清如はどう動くのか。
〇曲直瀬道三の思惑は?
〇キリシタンの宣教師はなぜ日本で薬草を育てたのか?
〇意外な結末とは?

結末には、意外な人物が関係しています。
さらには当時ヨーロッパで起こっていた「魔女狩り」も絡めた真相。

本当に「そ~来るか~!」って感じなので、楽しみに読んでほしいですね。

★「山三郎の死」

 

歌舞伎役者

時は移り変わって、豊臣秀吉の死後、関ケ原の戦い(1600年)あとのお話。

淀君が産んだ豊臣秀頼は、秀吉の子ではなかった!

という疑惑が大阪城内でもささやかれています。

そこで密命を受けたのが、関ケ原以降に出世した片桐且元。

当時から噂されていた「山三郎」の行方を追います。
山三郎」は、蒲生氏郷の元家来で且元とも面識があります。

片桐且元は、調査をするうちに「出雲阿国(いずものくにおくに)」に出会います。
〈ちなみに「出雲阿国」は、現代まで続く歌舞伎の元になった一座です。〉

出雲阿国の像

「山三郎の死」では、秀頼の本当の父親を探すのが主題ではあるものの、もうひとつ副題として「歌舞伎」の原点を紹介するものでもあります。

そして、片桐且元が最後に感じたものは、

「女性の強さ」

でした。

片桐且元は、物語後の「大阪の役」発端となる歴史上の重要人物であり、彼をこの物語の主人公に据えたのもおもしろい人選ですね。

この短編も展開が鮮やかで奇想天外でおもしろくできています。
まさに加藤廣ワールド全開!の印象ですね。

★「天草挽歌」

天草四郎の像

こちらはまた時代が変わって、徳川の時代に入っています。
でも、登場するのは、明智左馬助の息子。三宅藤兵衛。
巡り巡って長崎の寺沢家の家老として仕えています。

この章の主題は

「キリシタン弾圧」

明智左馬助に似た心優しい、正直な心を持つ藤兵衛。
この藤兵衛は「本能寺の変」後、明智光秀の娘・細川ガラシャ(明智たま)に預けられていました。

細川ガラシャは藤兵衛の叔母にあたります。藤兵衛はその時期にキリシタンの洗礼を受けていました。

その後は、唐津藩に仕える家庭で棄教(改宗)して、富岡城代になっていたのです。

棄教はしていたものの、今度はキリシタンを弾圧する立場になってしまうのです。

富岡城周辺は、以前キリシタン大名・小西行長が治めていた地。民衆にも隠れたキリシタンが多くいました。
キリシタン弾圧の命令を受けて、苦悩しながらも、辛抱強く説得による改宗をすすめていたものの・・・

「天草島原の乱」(1637年)勃発。

〇藤兵衛はどうなるのでしょうか?
〇天草四郎は、豊臣秀頼だったのでしょうか?

なかなかにヘビーな話題を最後にもってきましたね。

実は著者の加藤廣さんは2018年に87歳で亡くなっています。

その最後の作品が

【秘録 島原の乱】


なんです。
私もまだ読んでいないのですが、俄然読みたくなりました。

加藤廣ワールドは次々に新しい本を読みたくさせてくれますね。歴史的な興味もじゃんじゃん煽ってきます。

それはともかく、「天草挽歌」の章はかなり考えさせられる作品になっています。

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★最後に。

読書

最後まで読んでみて、それぞれの主人公。

「いやいや全然、脇役じゃないっす!」

脇役で短編を作りました。・・・っていう軽い感じじゃないんです。
それぞれが、ひとつの長編小説としてもいいぐらいの情報量
充分に主役級のキャラクターに仕上げてしまうその画力。・・・じゃない文章力。

(画力と書いたのは、文章を読むうちになんとなく頭の中にその映像が浮かんでくる描写能力をもっているから!)

何よりも短編集の主人公にした人選もすごいです。
主人公は名前は聞いたことあったけど、よくは知らなかった人物たち。

私、今さらですが「加藤廣戦国ワールド」のファンになってしまいました!

できれば、「本能寺三部作」を読破してから読んでもらえると、より一層楽しめるんじゃないかと思います。
(もちろん、単発で読んでも充分おもしろいです。)


加藤廣著。「本能寺三部作」の紹介記事!

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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