こんんちは。ケンスケです。
戦国時代の「水軍」というと瀬戸内海の「村上水軍」が有名ですね。
でも、もうひとつ、村上水軍に優るとも劣らない水軍がありました。
その名も
九鬼水軍
九鬼嘉隆はもともと豪族上がりの戦国大名。
織田信長に認められて大名にまで成り上がった九鬼家。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康天下人に認められて、三人ともに仕えた九鬼嘉隆と子・守隆。
毛利水軍を破るために鉄甲船をつくったり、北条家の風魔小太郎と戦ったり。
あまり歴史では詳しく取り上げられなかった九鬼家の親子の物語。
【水軍遥かなり】加藤廣 著
をご紹介します。
『【水軍遥かなり】加藤廣著。海賊あがり大名の戦国時代の物語。』
〇「海」に憧れがある!
〇列強大名の小説だけじゃつまらない!
〇戦国時代の水軍の話が知りたい!
〇加藤廣戦国ワールドのファン。
〇多角的に戦国時代をみてみたい。
〇読みやすい戦国時代小説を探している。
それでは、いってみましょう!
伊勢志摩で最強を誇った九鬼水軍
九鬼家は南北朝時代に志摩周辺の豪族とともに海上の交通を支配していました。
戦国時代になると、北畠家に属していましたが、織田信長の勢力が強くなると信長軍に加勢。
以降は織田軍・秀吉軍の水軍として、各地の戦いに参加しています。
長島一向一揆
石山本願寺攻め
九州征伐
北条小田原攻め
朝鮮出兵
戦国時代の九鬼水軍の長は「九鬼嘉隆」。
物語の主人公となる九鬼守隆の父親です。
さまざまな武功を挙げたことで時の天下人に重用され、志摩の国の大名になったのです。
とくに有名なのは織田信長軍が石山本願寺を攻めた時のこと。
本願寺側を援助していた毛利家は、瀬戸内の村上水軍を使って制海権を制していました。
が、九鬼嘉隆の水軍が鉄甲船(鉄の板で船を武装したもの)を操ると村上水軍を撃破。
当時、最強の水軍と呼ばれることになったのでした。
海の子・守隆。
物語は数々の戦歴のある嘉隆。
ではなく、息子の守隆が主人公です。
小説の守隆は非凡な子供。
暇をみつけては、海の水平線を眺め続ける少年時代を過ごします。
そしてある日、父・嘉隆とともに信長に謁見することになるのです。
息子に非凡な才能を見出していた父・嘉隆は、「天魔」とよばれた信長に息子が変なことを言い出さないか、やきもきしています。
物語は日本の戦国時代を描いているのですが、なんとなく世界の「大航海時代」の物語のようで、ドキドキしながら読み進められました。
そうなんです。
日本が国内で群雄割拠の戦国時代を繰り広げているころ、世界は「大航海時代」だったのです。
大航海時代の流れの中で、日本にも「鉄砲」(1543年)が伝わり、織田信長はキリスト教の教会を容認したんですね。
結果的にキリシタン大名が誕生することになります。
で、鉄砲が伝来したこの時期、コペルニクスは今では常識になっている地動説を唱えます。
ちなみに世界で初めて、船で地球を一周したのがマゼラン。
1522年のことでした。
(マゼランは航海途中1521年に亡くなっています。)
ただ、当時の日本ではまだまだ世界の最先端の科学は知られていませんでした。
そこに目を付ける幼い守隆。「水平線ってどうなってるの?」
科学にも目を向けていた信長。「宣教師がうまく説明できないんだよ!」
二人の会談はおもしろい方向へと展開します・・・。
天下人たちの水軍重要度の違い。
九鬼水軍は、信長・秀吉・家康、三人の政権に仕えることになります。
ただ、三人の中での水軍の重要度が全然違うのです。
信長時代は、まだ日本が統一されていません。
織田家と敵対する大名がまだまだ各地に存在していました。
各地でも戦闘は勃発しており、陸上での戦闘、さらには海戦も重要だったのです。
結果、九鬼水軍は信長に重用されるのでした。
秀吉時代になると、全国はほぼ統一。
残るは、九州の一部と小田原北条家ぐらい。
使われるのは、陸上軍団の「輸送」といった役割でした。
ただし、晩年の秀吉は広大な「明」を手に入れるべく、朝鮮に侵攻します。
ここは、水軍の腕のみせどころですね。
九鬼水軍はどのように使われたのでしょうか?
家康が「関ケ原の戦い」を制するとほぼ日本での水軍の役割は消滅してしまいます。
さらには、各大名の力を削ぐために、徳川幕府は大規模な船の建造を禁止します。
ただし、家康には大きな夢があったのです。
「大阪の陣」後、主人公・守隆に家康が語った大きな未来への構想とはどんなものだったのでしょう?
それぞれの天下人の置かれた状況や性格が九鬼水軍の将来を左右していく流れが、詳しく描かれています。
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鉄甲船・風魔小太郎・海外進出・・・。
小説か・加藤廣は、ただ時代の出来事を追っていくだけじゃないんです。
物語としておもしろく読める要素もしっかりと混入させています。
まず、「鉄甲船」。
石山本願寺を信長軍が攻めているときに悩まされたのが、毛利水軍。
村上水軍を中心とした毛利軍に海上では織田家は歯が立ちませんでした。
そこで九鬼嘉隆が導入したのが鉄甲船。
さらには卓越した操舵技術で村上水軍を圧倒します。
造船に興味をもった守隆に明かした鉄甲船のカラクリも小説のおもしろいところです。
さらに、北条家との海戦で登場するのが伝説の忍び「風魔小太郎」。
身長2メートル、金髪の赤い顔。
「鬼」!?
守隆との対決もみどころのひとつですよ!
そして、もうひとつ。
時は、徳川幕府が鎖国する前の時代の物語。
海外で活躍していた日本人がいたのです。
その名も「山田長政」!
守隆よりも若い年齢で海外に進出し、タイのアユタヤという都市で傭兵をしていたのです。
守隆の幼いころからの夢が広がった瞬間でした。幼いころから憧れていた人生を送る日本人がいたのです!
鳥羽城の石垣
世界の海に憧れた守隆は、その後どんな生涯を過ごしたのでしょうか。
最後に。
九鬼水軍。
なかなか物語の主役として読んだことない題材ですね。
で、今回も加藤廣の戦国ワールド全開です。
デビュー作【信長の棺】から信長が主張している当時の暦問題。
さらには世界の科学の話もでてくるし、秀頼出生の秘密の話まで。
情報満載です!
歴史にあまり詳しくない方でも読みやすい文章で、わかりやすいです。
他の歴史小説と比べても登場人物はそれほど多くはない印象なので、戦国時代初心者にもおすすめできる小説ですね。
「本能寺三部作」以外はほとんど短編で書かれている戦国時代の小説ですが、今回は長編です。
守隆の夢の物語をもっと見ていたくなった作品でした!
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最後まで読んでいただきありがとうございました。