日本に棲む怪魚にまつわる物語。「日本怪魚伝」は心に残る短編集!

こんにちは。ケンスケです。

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子供の頃、マンガの「釣りキチ三平」が好きでした。
中でも、印象に残っているのは、水鳥をも飲み込む巨大イワナの話。

最近でも、テレビなどで「怪魚ハンター」とか放送されているとどうしても見てしまいます。

今回は、日本に棲むといわれる怪魚たちをテーマにした物語を収録した本【日本怪魚伝】を紹介します。

書いたのはなんと、私が大好きな作家・柴田哲孝さん。

歴史的事件から探偵小説、そして未確認生物の小説まで幅広く書いている作家さんです。

彼の描く小説は、どれもみ~んなおもしろいんですよ。

もちろん今回紹介する【日本怪魚伝】も「間違いなし!」です。

クエ

日本に棲む怪魚にまつわる物語。「日本怪魚伝」は心に残る短編集だった!


こんな方におすすめです!
釣りが好き。
未確認生物(UMA)に興味がある。
現代の生態系に危機を感じている。
軽く読める。かつ、おもしろい小説を探している。
見たことない生物にロマンを感じる。

それでは紹介していきましょう。

日本に棲む伝説の魚たち12種を紹介!

巨大魚アカメ↑日本に棲む巨大魚・アカメ

この小説で紹介している魚。12種類
アカメ
ビワコオオナマズ
リュウグウノツカイ
ニッコウイワナ
タキタロウ
オオウナギ
クエ
オオクチバス
レイクトラウト
アオウオ
コイ
イトウ

知っている魚も知らない魚もいることでしょう。
この本で紹介されている魚種はみんな大型種ばかり。

釣りをする人ならみんな憧れの魚たちです。

ちなみに私が印象に残ったのは、「リュウグウノツカイ」「ビワコオオナマズ」のはなし

このふたつの物語は、「釣り」とは関係ありません。
しかも主役は、魚でもない!

どのように関連するかは、読んでみてのお楽しみにしてほしいのですが、おもしろいんです。

歴史的な事件とリンクして、すごく奥深い作品です。

他の作品も著者・柴田哲孝の展開のうまさが本領発揮されています。

たくみな情景描写・心情描写が物語の中に読者を引き込んでいくのです。
時代背景の説明も解説っぽくなくて、物語に集中できます。

とにかく、釣りをする人もしない人も、生き物が好きな人も時間を忘れて読みふけってしまう作品なんです。

この作品を読んでおくとテレビでも人気の水を抜く番組も楽しめること間違いなしですよ。

池の水。生物多様性。暴走する生き物愛・・・この本も勉強になります。

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さまざまな叙述形式で飽きさせない短編集

ナマズ

12種類の魚を題材にした、12個の作品が1冊に収められています。
私は読書するとき作品の中にひたりたいので、あっという間に終わってしまう短編はあまり好んでいませんでした。

ですが、この小説のすごいところは、短編なのに短いと感じさせないところ。
さらに、1話ごとに物足りなさを全然感じないところ。

作風も、ノンフィクションだったり、歴史小説だったり、おじいさんの語り風だったり、エッセイだったり、冒険小説だったり。

それらをうまい具合に順番をゴチャ混ぜにして、飽きさせません。

それに、作者のフィクション小説【TENGU】【KAPPA】に出てくる人気キャラの有賀雄一郎が出てきます。

もちろんそれらの小説を読んでいなくても大丈夫。一人の釣り好きの男として認識していれば問題ありません。

また、登場人物に作家の開高健さんも出てきたりして、釣りが好きな人も読書好きな人も楽しめるようになっています。

叙述方式を変えながら、語り手や視点を多面的にすることで、地球環境と人間生活の問題を浮き彫りにしていくのです。

時代と語り手を変えることで、人と自然との関わり方に問題提起しているんですね。

人間のエゴと環境問題を提起。

リュウグウノツカイ

12の短編を通して、共通されるふたつのテーマは、「人間のエゴ」と「地球環境のエコ」

私たち人間の生活は、日々便利で快適になっていきます。
そのなかで、犠牲になっていたのは、物言えぬ自然だったのです。

作品では、変わりゆく河川環境、外来種問題、自然破壊、・・・、いろんな問題を提起しています。

私の印象に残っているのは、北海道でアイヌの人が語る「釧路湿原の自然」。

アイヌの方々が守ってきた自然。
和人が奪い取り、破壊した森や川。
いなくなってしまった伝説の魚。

今は保護されて、私たちが「きれいな自然が残っている地」と勘違いしている場所も、上流に遡れば破壊が進んでいること。

生き物が好きで、この本を手にとってみたのですが、思いがけず印象に残る作品になりました。

今はどうしたらいいのかはわからないけれど、知っておくことは大切。
まずは「知る」ことからはじめてみるのもいいかもしれません。

夢とか目標とかロマンを感じさせる作品。

マス

ここまで読んでいただいた方は、シリアス過ぎてちょっと・・・。

ってなっちゃうかもしれせんよね。

でも、そんなふうに読まなくても大丈夫。

日本のどこかにみたこともないような大きな魚がいて、今も水の底で暮らしている!

なんかロマンを感じませんか?

私は水族館へもよく行くのですが、やっぱり大きな魚や生き物には圧倒されます。

過酷な環境を生き抜いて、大きく成長した姿。

なんでだか、大きなものには畏敬の念が湧いてきます。

作者の柴田哲孝さんの作品は、そんな私の感性にもピッタリ。
こちらはノンフィクションですが、【KAPPA】【RYU】っていう作品も書いています。メチャクチャおもしろいのでぜひ読んでみてほしい作品です。

「動物と共に暮す」ということを教えてくれる心に残る一冊。

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カナダガンのヒナ

最後に。

鯉のぼり

外来生物の問題や自然破壊の問題は簡単には解決できない問題です。
時代背景だったり、それで生計を立てている人だったり、いろんな問題が絡んでくるからです。

大規模な災害が起きて、その被害をみていると「開発が悪」だとか「護岸工事のせいで生き物が減っている」とか簡単には言えないです。

食用のために池に放された魚。
レアメタル発掘のため開拓された森林。
きれいな川を取り戻す目的で放されたホタル。



それで、生きている人たちもいる。

すべてを批判するのではなく、かといって人間だけの視点でもなく、知っていくことが重要なんです。

自然のためと思われていたことも、時間が経ってみると違う問題に発展していた!

なんてこともあります。

【日本怪魚伝】は、いろんな問題を気づかせてくれた本です。
ぜひ、一度読んでみてください。

日本怪魚伝
柴田哲孝 角川学芸出版 2009年07月
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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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