【秘録 島原の乱】加藤廣最後の小説。読む前に背景とみどころを解説!

こんにちは。ケンスケです。

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豊臣秀吉の子・豊臣秀頼(ひでより)。
大阪夏の陣で徳川家康・秀忠親子の軍に総攻撃され、大阪城で自害したといわれています。享年23歳でした。

ですが、遺体がみつからなかったこと、絶命する瞬間をみた者がいなかったことから生存説も根強く残っています。

さらに、豊臣秀頼の出生の秘密にしても謎に満ちていますね。
(秀頼は秀吉の子ではなかったかも・・・?)

一方、大阪夏の陣(1614年)の13年後の寛永14年(1637年)、現在の長崎県島原で起きた

「島原の乱」

このキリシタンによる一揆を先導したのが

天草四郎時貞。

天草四郎の像

この人物も謎に満ちています。

で、ロマンあふれる歴史好きな人たちの間では、

天草四郎時貞は、豊臣秀頼と関係があった!?

な~んていう伝説もささやかれていたりするんです。

今回紹介する【秘録 島原の乱】は、歴史小説家・加藤廣氏の最後の小説
遺作となりました。

壮大な物語で、話に引き込まれること間違いなし!

【秘録 島原の乱】をもっとおもしろく読むための関連本も紹介していきます。

それではいってみましょー!

【秘録 島原の乱】加藤廣最後の小説。読む前に背景とみどころを解説!


こんな方におすすめです。
加藤廣の歴史小説が好き。
「関ケ原の戦い」後にも興味がある。
ロマンのある歴史エンターテイメント小説が読みたい。
歴史は詳しくないけど、おもしろい時代小説を読みたい。

「神君家康の密書」「宇都宮城血風録」を読んでおくともっとおもしろい!

ポイント!

【秘録 島原の乱】は、伝説といわれた物語をおもしろくエンターテイメント化した壮大な長編小説です。

加藤廣氏の小説たちは、人物の個性とエピソードが共有されていて、作品どうしがリンクし合っています。

なので、全部の小説を「続きもの」として、通して読むとおもしろいんです。

今回は特に順番が重要。

神君家康の密書」(短編集【神君家康の密書】に収録)

宇都宮城血風録」(短編集【家康に訊け】に収録)

【秘録 島原の乱】

もちろんそれぞれ単独で読むことはできるのですが、より楽しみたい人は、この順番で読むと物語が理解しやすいです。

というのは、

【秘録 島原の乱】には、数多くの人物が登場します。
この2作品を読んでおくと魅力的な登場人物たちを理解するのに役立ち、物語の中に入り込みやすくなるんです。

「神君家康の密書」(【神君家康の密書】2011年)
まじめな豪傑・福島正則と喰えない古狸・徳川家康とのばかし合いの物語。
時は豊臣秀吉没後の「関ヶ原の戦い」直前。
このやり取りが伏線になって、のちの「宇都宮城血風録」に続きます。
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神君家康の密書
「宇都宮城血風録」(【家康に訊け】2019年)
徳川二代将軍秀忠の謀臣・本多正純にハメられた福島正則。「このままじゃ終われない!」愉快な仲間たちと巨大な陰謀に立ち向かうアクションあり、策略ありのエンターテイメント。
この物語に出てくる登場人物たちが【秘録 島原の乱】でも大活躍します。
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家康に訊け!

他にも、【明智左馬助の恋】や「天草挽歌」(【信長の血脈】に収録)を読んでいるとより一層理解が深まります。

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清州城とタイトル

もちろん、単独で読んでも充分に楽しめる小説です。
壮大なスケールで描かれた作品で、

脱出劇あり
謀略あり
忍者あり
剣術一騎打ちあり
妖術あり
合戦あり
恋愛あり

いろいろと起きる物語。

「いったいどんな作品だよ?」と思ったあなた!

読んでみてくださいな。

物語の背景:「島原の乱」はただのキリシタン一揆ではなかった!

原城跡

「島原の乱」は、1637年に長崎の島原・熊本県の天草地方で起こった一揆です。
ちなみに歴史上は「天草島原の乱」といわれることが多いです。

※一揆(いっき)とは。
もとは心を一つにすること「一致団結」の意味でしたが、歴史上では、農民・地侍・信徒など下級とされてきた者たちが政権や代官に対して集団で起こす蜂起・暴動のことを指します。
一向宗によるもの・・・一向一揆
農民によるもの・・・百姓一揆

背景①禁教に対する暴動

原城跡の石像

「島原の乱」は、キリスト教を禁教したことに対する暴動で、鎖国政策のもとになったといわれています。

もともと島原とすぐ隣の天草地域(熊本県)は、キリシタン大名が治めていたので、宣教師の数も教会の数も多くありました。

そのため住民もキリシタンが2/3も占めるほどいたといわれています。

ただし、秀吉政権の時代「パテレン追放令」(宣教師を追放する命令)が出されたあとは、表面上は神道や仏教徒としてみせかけ、密かに信仰を守り続ける人々「潜伏キリシタン」になっていったのです。

徳川時代になると、よりキリシタンに対する弾圧・迫害は過酷を極めます。とくに三代将軍・家光の時代はかなり弾圧が厳しく行われました。

潜伏キリシタン信仰がさかんだった、天草・島原地域の住民たちは、幕府の仕打ちに不満を募らせるのでした。

余談ですが!

【秘録 島原の乱】作者の加藤廣著作の小説「天草挽歌」では、このあたりの背景が描かれています。

「天草挽歌」は【信長の血脈】に収録されている短編です。
この小説では、三宅藤兵衛が主人公。

三宅藤兵衛は、実は明智光秀の娘婿・左馬助の息子なんです。
光秀・左馬助の死後、細川ガラシャ(光秀の娘)に預けられていた三宅藤兵衛。

藤兵衛は敬虔なキリシタンの細川ガラシャの影響で少年時代はキリシタンだったのです!

この藤兵衛が天草の地、唐津藩富岡城の城代になってしまい・・・幕府の都合でキリシタンを弾圧する羽目に・・・。

こちらもおもしろい小説なので合わせて読んでおくべきですね!

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背景②過酷な年貢取り立て

凶作

この時代の年貢は、採れた石高に対する割合で年ごとに変化するものではありませんでした。

通年、採れる石高に対する割合で年貢が決められていたのです。
ということは、豊作の年は余裕があるものの、凶作の年は・・・?

現代の日本では、「累進課税」といって収入の多い年は税金を多く支払い、少ない年は税金も少なくてすむようになっていますよね。
「所得控除」といって、最低限の生活は保証されるようにもなっています。

とくに「島原の乱」前の何年かは異常気象が続き、さらには台風の上陸もあったことで、農民たちは大打撃を受けていたのです。

こうなると救いは、「年貢の軽減」「年貢延滞を容認」になるのですが、藩はそれを許しません。むしろ取り立てを強化するほどでした。
百姓の中には餓死する人も出るほどでした。

というのは、当時、

参勤交代による支出
江戸城普請のための徴収

徳川幕府からの要請が重なって、唐津藩・島原藩ともに財政は火の車だったのです。

背景③政治に対する不信感

反乱

○領民に棄教(信仰を捨てること)を促し、キリシタンたちを弾圧・迫害
○異常気象による飢饉
○年貢取り立ての強化

これによって、藩や幕府に対する不満が領民たちの間で深まっていったのです。

「天草島原の乱」はキリシタン一揆と百姓一揆のハイブリッド型

ハイブリッドとは、
「2つの要素を組み合わせてできたひとつのもの」という意味です。

キリシタン弾圧と年貢の取り立てによって、領民たちは疲弊しきっていました。

そこに現れたのが

天草四郎の像

天草四郎時貞

救世主・信仰の復活・租税免除をかかげた指導者が出現したのです。

【秘録 島原の乱】では、

なぜ一揆がこれほどまでに拡大したのか。
この時期に起きた理由。
天草四郎時貞の秘密。

などなど歴史好きなら楽しめる要素が満載です。

物語を読みながら難しい歴史も学べるところがおもしろいんです。

個性豊かなキャラクターたちが大活躍!

佐々木小次郎の像

加藤廣氏の作品の面白さは、

キャラクターの個性!

なんです。

出てくる登場人物たちはみ~んな個性豊かな人々ばかり。

そして、登場人物たちはみんな根っからの悪人ではないところが読んでいて心地いいんですね。

「神君家康の密書」や「宇都宮城血風録」で活躍した人物と今作で初めて登場する人物たちが融合して、なかなかに楽しい物語です。

忍者も剣客も、武将も女性たちも、いろんな立場の人を巻き込んでの大騒動。

歴史小説ではなくて、時代劇エンターテイメントと言ったほうがいいかもしれません。

扱っているのが「天草島原の乱」なので、結構重いテーマです。
こういった重いテーマを扱った小説は、なんとなく悲壮感にとらわれるのが常ですよね。

ですが、

今作品では、悲壮感もあんまり感じないんですね。

登場人物たちは共通して「さっぱりした性格」なんです。

なので、強大な権力に立ち向かう人々を痛快に描いた物語になっていて、読んだあとには、

さっぱりした気分

にもなれるんです。

内容については触れませんが、地方の一揆をこれほどまでに壮大な計画に仕立てあげた筆力はすごいと思います。

こちらの作品も一度は読んでおきたい!

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武蔵と小次郎の対決

最後に。

大坂の陣

【秘録 島原の乱】は、加藤廣氏最後の長編作品です。
私は著者の【信長の棺】を読んで、続編【秀吉の枷】【明智左馬助の恋】で完全にファンになりました。

彼の作品群はどれも共通の史観で描かれているので、「シリーズ物」として読んでもおもしろい!

それぞれの作品が独立していながら、他の作品とも繋がり合っているんです。

イメージで言うと「蜘蛛の巣」みたいな感じです。

非常に残念なことに【秘録 島原の乱】が遺作になってしまいまいした。

加藤作品の大ファンとしては、できれば「関ヶ原の戦い」「大坂の陣」を題材にした作品も書いて欲しかった!というのは贅沢でしょうか?

「関ヶ原の戦い」「大坂の陣」を描いた他の作家の小説はたくさんあります。
ですが、作家・加藤廣がこの2つの戦いをどう見ていて、どう描くのかを見たかったという思いなのです。

さてさて、

【秘録 島原の乱】は、壮大なスケールで描きつつ、さまざまな伏線が張り巡らされていて、非常に緻密な構成になっているのが特徴です。

歴史好きのあなたは最初からいきなり物語の中に引き込まれるでしょう。
最後までいっきに読み進めれば、きっと最後は爽快な気持ちになっているはずです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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