カブトムシの能力が人類を救う?!雑菌から身を守る研究の話!

こんにちは。ケンスケです。

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今でも大人、子供問わずに大人気のカブトムシ。

カブトムシは幼虫の間、土の中で生活していますよね。しかも土を食べて成長しています。

でも、

土の中は雑菌がいっぱい!

雑菌

どうやってカブトムシたちは、雑菌から身を守っているのでしょうか?

今回は、そ~んな研究がもしかしたら、

ヒトの健康に役立つかもしれない!

っていう話題です。

カブトムシの能力が人類を救う?!雑菌から身を守る研究の話

今回はちょっと難しい話になりますが、がんばって分かりやすく書いていますので最後まで読んでみてくださいね。

カブトムシはどうやって雑菌から身を守る?

カブトムシ幼虫の顔

免疫の役割

 

基本的に私たち「ヒト」は、土を生のまま食べると・・・

お腹を壊してしまいます。
絶対にやめましょう

でも、カブトムシの幼虫たちは、土を食べてそれを栄養にしてエネルギーにしたり、大きく成長したりします。

幼虫のエサとなる腐葉土は、落ち葉や枝、木が微生物(細菌・ウィルス・真菌・原生生物)によって分解されたもの。

ってことは、土には微生物がた~くさん住んでいるってことです。
もちろん、身体にいいものも悪いものも。

切株と落ち葉

身体にいいものは、体内に取り入れて腸内に住み着いたり、栄養に取り入れたりします。体に悪いものは、どうにかして排除しなければいけませんよね。

そこで、活躍するのが

免疫機構です。

獲得免疫と自然免疫

自己防衛のイメージ

有名なのがアレルギー反応で知られる抗原抗体反応です。
「獲得免疫」っていいます。
後天的に得られる免疫反応なんです。

抗原抗体

※抗原抗体反応
抗原(菌やウィルスなどの異物)が体内に入ったり、接したりした後、体内でその抗原に対する抗体が作られ、その抗原に対する防御機能を獲得すること。
強力な免疫能力をもっているが、反応までに時間がかかる。

実は、カブトムシはヒトのように抗原抗体反応で異物を撃退することはできません。
そもそも「抗体」を作る機能がないのです。

カブトムシは「自然免疫」を使います。

※「自然免疫」
体内に入った異物を溶かしたり、食細胞が攻撃して無毒化させる仕組み。獲得免疫によりも早く反応できる。(ヒトの体内では「自然免疫」と「獲得免疫」が相互に働いて異物を排除する仕組みがあります。)

カブトムシは「自然免疫」によって、体内に入った有害になる細菌やウィルス、真菌を排除しているのです。

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注目される「カブトムシディフェンシン」

カブトムシの幼虫

カブトムシはどのような自然免疫を持っているのでしょうか。

カブトムシの体液の中にはカブトムシディフェンシンというタンパク質があります。

カブトムシディフェンシンは1996年、当時の蚕糸・昆虫農業技術研究所(現:農業生物資源研究所)の宮ノ下らにより発見された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

※ディフェンシン
細菌・真菌・ウィルスに対抗するタンパク質。異物の膜を破壊することで無毒化させるもの。抗微生物タンパク質といわれている。
+(正)電荷なので、-(負)電荷の微生物の細胞膜にくっつくことで作用する。

この「カブトムシディフェンシン」がヒトの生活における抗菌剤として注目されているんです。

さまざまな微生物に対する抗微生物物質として。
薬剤耐性細菌(抗生剤に耐性がある細菌)にも効果が見込める。
耐性菌が出現しにくい。
正常な細胞には作用しにくい。
一部のがん細胞にも効果が見込める。

素晴らしいでしょ!

とくにMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの抗生剤に耐性のある細菌との戦いは、今までイタチごっこが続いていました。

また、一部のがん細胞に作用することから新しい抗がん剤としても研究されています。

もっと詳しく知りたい方は、
昆虫由来抗菌ペプチドの応用に関する研究カブトムシから薬を目指せ(外部リンク)

普通の抗がん剤や放射線治療は、正常な細胞にも作用して、強い副作用をもたらしますが、カブトムシディフェンシンは正常な細胞には作用しません

ということは、「副作用も出にくい!」ってことですね。
人に使える日が待ち遠しいですね。

カブトムシディフェンシンの応用は大変!

研究室の景色

「カブトムシディフェンシン」は43個のアミノ酸(残基)がくっついた構造をしています。

そのままヒトの体内に入れてしまうと、抗原抗体反応によってディフェンシン自体が排除されてしまいます。
なので、
いくつかで分けます。
分けたものを「ペプチド」といいます。

ちょっとややこしいですね。

タンパク質
↓(細かくすると)
ペプチド
↓(さらに細かくすると)
アミノ酸(バリンとかロイシンとかアルギニンとか・・)

簡単に要約するとアミノ酸が結合するとペプチド。ペプチドが結合するとタンパク質。みたいな感じでしょうか。

話を戻します。

43残基のカブトムシディフェンシンを細かいペプチドに分けて体内に入れることで、身体に受け入れてもらうわけですね。

その数が9個ぐらいがちょうどいいといわれています。
細かく切る場所によっては、抗微生物の作用(抗菌活性)がなくなってしまったり、作用する菌の種類が少なくなってしまったり。

この「ちょうどいいところ」を見つけるのが大変なんですね。

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まとめ!

消毒イメージ

今日は少し難しい話をしました。
ちょっとまとめておきましょう!

〇カブトムシは土の雑菌から身を守るために「カブトムシディフェンシン」をもっている。
〇「カブトムシディフェンシン」は新しい抗微生物薬として注目されている。
副作用の出ない抗がん剤としても期待されている。

こ~んな感じです。

カブトムシが人々を救うかもしれない?!

と思うと、カブトムシ飼育におけるコバエの煩わしさもゼリー交換やマット交換の大変さも尊いものに感じられることでしょう。

もしかしたら、カブトムシの養殖業も見直されてくるかもしれませんね。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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