明智光秀が謀反した理由がよく分かる小説!加藤廣【明智左馬助の恋】

こんにちは!ケンスケです!

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「本能寺の変」。

歴史好きの方はな~んかドキドキするテーマですよね。
今回紹介する小説は、加藤廣さんの「本能寺の変」三部作のひとつ。

【明智左馬助の恋】加藤廣著(文春文庫)

【信長の棺】【秀吉の枷】の完結編ともいうべき作品です。
三部作の中では私は【明智左馬助の恋】がいちばん好きかも。

もう10年以上前の作品ではありますが、今読んでもおもしろい!
何より加藤廣戦国ワールドにおいて、明智左馬之助のカッコよさはピカイチです。

主君である光秀が「本能寺の変」を起こす過程とその裏で散っていった明智家の人々の物語です。

こんな方におすすめです!
〇「本能寺の変」の裏側を知りたい方
〇明智光秀の人物像を知りたい方
〇信長と光秀の関係性に詳しくなりたい方
〇「本能寺の変」に至るまでの流れを知りたい方
〇カッコいい戦国武将を探している方
〇歴史好きな方

『明智光秀が謀反した理由がよく分かる小説!加藤廣【明智左馬助の恋】』

主人公は明智左馬助(光春または秀満)

騎馬に乗った武士

実際には詳しい出自は明らかになっていないようですが、物語の中では備前(岡山)出身の武将・三宅弥平次として登場します。

幼いころから光秀のもとへ預けられ、明智光秀の娘・綸(さと)と婚約していました。
一緒に育った二人は、光秀の妻・煕子(ひろこ)の計らいで愛を育んでいました。

ですが、

離れ離れに!!!

信長の命令で、綸は摂津の荒木村重の息子・村次へと嫁ぐことに・・・。

二人は大きな権力の前に引き裂かれてしまうのです!

のちに荒木村重は信長に対して謀反を起こします。

ふたりの運命はいかに?

左馬助は主君である光秀の側近として仕えています。
光秀の人柄は「誠実」そのもの。左馬助も心服しています。

狡く立ち回って出世していく秀吉。
「誠実」「生真面目」に行動することで割を食う光秀。

〇織田家出世争いを繰り広げる対照的な二人をみて左馬助はどう見ていたのでしょうか?

一方、光秀の主君・信長は安土城を完成させ、領地の支配を強めるとともに敵対する者、家臣たち、民衆、さらには朝廷にまで強権を発動していきます。

〇尊王、宗教心の強い光秀が信長の行いに苦悩する姿を左馬助はどう見ていたのでしょうか?

〇光秀が「本能寺の変」へと突き進んだ経緯を間近でみていた左馬助はどう行動したのでしょうか?

明智左馬助の動きには目が離せない!そんな物語になっています。
【信長の棺】【秀吉の枷】でも鍵になる人物として、時々登場する明智左馬助。

この物語では、左馬助が主役です。
一段とカッコいい武将として登場しているので、男性はもちろん、女性ファンが増えるかもしれませんね!

とくにラストには、明智左馬助の見せ場が圧巻!楽しみに最後まで読んでみてくださいね。

主な登場人物を紹介!

【明智左馬助の恋】では、重要な登場人物はそれほど多くはありません。知っておくともっとおもしろいので、紹介しておきましょう。

明智光秀

坂本城の光秀像

明智左馬助の主君。ご存知「本能寺の変」を起こした張本人。
小説の中では「誠実」「忠実」でありながら、人一倍出世欲が強い、有能な人物として描かれています。

中国地方への攻略では、小賢しくふるまう秀吉を苦々しく思いながらも、険阻な丹波を攻略して、負けずに出世していきます。

そんな中、武田家滅亡に功のあった家康を安土で接待する役目を命じられます。

「誠実」であったはずの光秀がどのように「本能寺の変」を決意するのか、物語のみどころです!

斎藤内蔵助(利三)

武士

明智光秀の家臣。もとは美濃の斎藤家に仕えていました。
斎藤内蔵助も有能であった人物とされ、光秀には重用されていました。明智家の家老(重役)です。

実は、斎藤内蔵助は歴史上の重要人物なんです。

まず、妹。
四国の長宗我部元親の正室になった人物です。
当時、長宗我部元親は信長に四国の統治を任されていたのですが、それを信長が反故にして、三男・織田信孝を四国征伐に向かわせたのです。

最近では、縁戚関係にあった斎藤内蔵助が、光秀をそそのかして「本能寺の変」へと突入したという説もありますよね。

そして、娘。
のちの春日局(かすがのつぼね)です。有名ですね。
春日局は江戸三代将軍徳川家光の乳母です。
江戸時代の「大奥」を作った人物で、当時の江戸幕府で大きな権力を握っていたといわれています。

ちなみに
三代将軍家光の母は信長の妹・お市の娘で「お江(おごう)」!
【秀吉の枷】で活躍した茶々の妹なんです。

この辺の関係も知っておくと物語をより楽しく読み進めることができますよ。

多志

姫様

信長の側室「吉乃」の連れ子という設定になっています。
史実では石山本願寺に仕えた武将の娘のようです。

荒木村重に嫁ぎ、村重の謀反後、信長に捕らえられています。
加藤廣の戦国ワールドの中では、かなり美しい女性に描かれていて、【信長の棺】【秀吉の枷】にもキーパーソンとして登場しています。

物語中の多志の姿は美しすぎて、魅了された男性ファンは数知れず・・・(笑)

姿も行いも美しい姿は、今でも多くの歴史ファンの心を虜にしていると思われます。(たぶん!)

「多志」も登場する小説【空白の桶狭間】も一緒に読みたい!

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綸(さと)

 

さとのイメージ画像

明智光秀の娘。
明智左馬助と将来を約束されていましたが、信長の命令で荒木村重の長男・村次に嫁ぎます。

光秀は娘・綸と左馬助との約束を守れなかったことを物語の中で詫びています。

明智左馬助との恋はどうなっていくのかが小説のテーマでもあります。

で、

ちなみに、
綸の妹・玉は光秀の同僚である細川藤孝の子・忠興の正室になっています。

細川ガラシャ

聞いたことありますか?
のちにキリスト教へ改宗して、洗礼を受けた名前です。
「本能寺の変」後は、父が明智光秀ということもあり、波乱万丈の生涯を送っています。

戦国時代の女性の人生もさまざまに翻弄されていたんですね。
調べていくとおもしろいかもしれません。

明智左馬助の息子で細川ガラシャが育てた「三宅藤兵衛」が登場する加藤廣の小説「天草挽歌」も収録!

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荒木村重の謀反

有岡城跡

荒木村重が籠城した有岡城跡

摂津の池田家に仕えていた荒木村重。
下剋上して、いつの間にか大名になっていた風雲児。

信長から摂津の国を任されていたのですが、突然反旗を翻します!
天正6年のことです。「本能寺の変」が起きる4年前。

謀反の理由は、よく分かっていませんが、諸説あります。

足利元将軍を擁する毛利軍・信長に徹底抗戦する石山本願寺と連携して信長に抵抗します。

このとき、謀反を翻意させようと光秀&左馬助コンビが向かいます。
先述しましたが、光秀の娘・綸は、村重の嫡男・村次へ嫁いでいます。その関係性から信長は命じたのでしょう。

結局。

翻意ならず!

次に信長は、秀吉の家臣・黒田官兵衛が説得に当たりますが、村重は官兵衛を捕らえて地下牢へ。

(前作【秀吉の枷】で詳細が語られていますね。)

黒田官兵衛「大河ドラマ」のノベライズ本でも詳しく描かれています。
小説【NHK大河ドラマ軍師官兵衛】は戦国時代の入門書に最適!

荒木村重は有岡城に立てこもることになります。
信長は有岡城を取り囲みながら、村重周囲の家臣たちを次々と寝返らせます。

村重の謀反については、諸説ありますが、【明智左馬助の恋】小説内では、なぜ謀反を起こしたのか、光秀の見解が描かれています。

「なるほど!そーかも!」

と思える理由でした。

光秀の娘・綸はどうなるのか?
村重の妻・多志はどう行動するのか?
黒田官兵衛の生死は?
左馬助はどうする?

荒木村重の謀反とその後の信長の采配は、織田家臣団にも大きな爪痕を残しました。
もちろん、羽柴家にも明智家にも。

物語が進む上で、「荒木村重の謀反」は大きなキーポイントです!

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明智光秀の人柄

光秀イメージ

【明智左馬助の恋】の物語上では、光秀は実直の人。
武将としても有能で、文官としても織田家中では優れた人物です。

優れた人物ゆえに、信長からは便利に扱われます。

明智家の家臣からの信頼も篤く、今風に言うなら

「上司にしたい男」

って感じですかね。

光秀は信長に仕えるまでは苦労人。
生活に困っていた光秀を見かねた妻・煕子(ひろこ)は、自慢の黒髪を売って、光秀を助けました。
それをみた光秀は、煕子が亡くなるまで側室をもたなかったということです。

ちなみに煕子は、光秀が過労で結核になり、それを看病する中で自分も感染して天正4年に亡くなります。

このとき光秀は丹波攻めの最中。
丹波攻めで光秀は妻・煕子と叔母(実際は違った)が犠牲になっています。

そうして、多大な犠牲を払いながらも手に入れた丹波攻略でしたが、信長からでた褒美は、

感状一枚のみ!

これには信長側の事情もあったのですが、光秀が不信感を抱いたことのひとつです。

光秀は宗教心も強く、神仏さらにはキリスト教をも軽視する信長の行動にも疑問を抱いていました。

各地一向一揆の仕置き
比叡山・高野山での大量虐殺
村重謀反時の高山右近への脅し
有岡城開城後の妻子処刑
恵林寺の快川和尚焼き討ち
敵将への仕打ち
などなど

さらには、御所前で馬揃えを行ったり、正親町天皇に譲位を迫ったりと朝廷をもないがしろにする姿勢もみせています。

「本能寺の変」へと向かう光秀と信長。

すれ違うふたりの思惑。

明智側から見た視点で描かれているので、信長がメッチャ悪役になっているところもみどころですよね。歴史って視点を移すだけで「悪役」と「英雄」が入れ替わるんですよね。

明智左馬助からの目線だと、光秀は「理想の上司」だったのかも!なんて思わせてくれます。

信長の本質に左馬助は気づいた?

信長像

桶狭間の信長像

信長が残酷さをもった理由

信長

「本能寺の変」のあと、信長の遺骸を探す中で阿弥陀寺の清玉上人と出会います。
敵にも誠実に接する左馬助に好感をもった清玉上人は、信長の秘密を明かします。

安土城に込めた信長の思い

安土城跡

さらに、光秀が「山崎の戦い」で秀吉と雌雄を決する間、明智左馬助は北の柴田勝家、観音寺上の蒲生氏郷、東の徳川家康の抑えとして、安土城へ入ります。

そこで見た安土城の秘密と信長の思い。

清玉上人の話を聞き、安土城をみた左馬助は、信長に対してどのような感情をもったのでしょうか。
明智左馬助は信長の遺体を見つけられたのでしょうか。

この辺は物語の大きなテーマになっていますね。

ちなみに安土城で左馬助がつくったもの。
最後になかなか痛快な結末を見せてくれるので楽しみにしておきましょう。

明智光秀をそそのかしたのは?

光秀が「本能寺の変」を起こしたのは、自分の不信感や野望、怨恨だけが原因ではありませんでした。

誰かが光秀を動かした?

直接、光秀を動かした人物は物語中で明かされます。

が、

結局、最後まで明言はしませんでしたが、その人物とつながっていたのは、京都の豪商・茶屋四郎次郎

茶屋史郎次郎はある有力な大名と懇意にしていました。

う~ん。
核心に迫りすぎるので、ネタバレを避けるためこれ以上は書きません!
小説を楽しみに読んでみてくださいね。

「本能寺の変」三部作の完結編!

炎上した本能寺

【信長の棺】【秀吉の枷】につづく【明智左馬助の恋】。
本能寺の変を織田家視点、秀吉視点、明智視点からみていくおもしろい発想ですね。

ひとつの作品で、場面切り替えによって複数視点の小説はありそうです。しかし、三つの作品でこれだけ詳しく描かれるとやっぱりおもしろいです。

三部作ですが、それぞれ単独でも充分にみどころ、読みごたえ満載です。
なにより物語を読み進めていくにつれて、加藤廣の戦国ワールドがおもしろくってしょうがないんです。

作者は「織田信長」のことを嫌いなのかなぁ、と思いつつ、やっぱり好きなのかなぁ。

まぁ、好き嫌いでいうと作者は間違いなく明智左馬助は好きでしょうね。
最初から最後までカッコよく描かれています。

主役ではない【信長の棺】や【秀吉の枷】でもやっぱりカッコよく描かれています。

加藤廣さんの作品でまだ読んでいないものがあるので、早く読みたくなってしまいましたね。

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最後に。

ハート

切ない恋の物語です!

そう、本のタイトルは【明智左馬助の恋】なのでした。

で、

恋の行方は?

というと、

読んでからのお楽しみです。
一途な左馬助の思いは、綸に届くのでしょうか。

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熊本城

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