木が樹液を出すのはなぜ?人も虫も森のめぐみの恩恵にあずかっている!

こんにちは。ケンスケです。

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梅雨をむかえる頃になると虫たちが、動き出しますね。

私たちが大好きなカブトムシやクワガタたちも活動が活発になります。

カブトムシやクワガタを採集したいなら

「樹液の出ている木を探せ!」

ってきいたことはありませんか?

「樹液採集」っていいます。

採集者の間では、樹液のでているところを「樹液酒場」なんて表現したりします。

人が夜に酒場に集まるように、昆虫たちもエサを食べにやってくるので、そう名付けられたようです。

樹液には発酵したアルコールも含まれているので、うまい表現だと感心させられます。

でも、実際に雑木林にでかけてみると、樹液を出している木はあんまり多くはないことに気づきます。

そのぶん、樹液が出ている木には、虫たちがたくさん群がっていることも。

「樹液酒場」では、壮絶な争奪戦や弱肉強食、ときにはロマンスがあったりして、いろいろなドラマが繰り広げられています。

ムシ好きな人も嫌いな人も樹液が出る仕組みを知っておくと、雑木林にでかけてみたくなりますよ!(たぶん)

木が樹液を出すのはなぜ?人も虫も森のめぐみの恩恵にあずかっている!

樹液が出る仕組みを知る前に、木が自然界でどんな役割をしているのか、樹木の成り立ちをみておきましょう。

昆虫採集にも、昆虫飼育にもきっと役立つはずですよ!

森での植物の役割

植物が作る自然

理科の授業で習った通り、植物は太陽の光(日光)と水、二酸化炭素を利用して、「糖」(エネルギー)を作り出します。

これが「光合成」
光合成でできた有機物は、葉っぱや幹、実に蓄えられます。
その一部は草食の昆虫や動物が食べられます

草食の昆虫や動物たちに食べられた植物は、種を運んでもらったり、受粉を手伝ってもらったりすることで子孫を残します。

また、枯れた植物たちは、地面などに住むムシやバクテリア(微生物)のエサになることでもっと細かく分解されます。

微生物に分解される(発酵といいます。)ことで、土に還って新しい植物の栄養分にもなるんですね。

植物を食べた草食動物(雑食の動物も含めて)たちは、そのまま寿命を迎えたり、肉食の動物・昆虫に食べられたりして、命は循環していきます(食物連鎖)。

もちろん動物たちの死骸やフンもムシや微生物によって、土に戻っていきます。

こうした生き物たちの命のつながりのことを

「食物網」(しょくもつもう)

といいます。

また、生きている植物や枯れた植物、さらに分解された「土」は、生き物たちの住み処や産卵場所としても利用されています。

大きく生い茂った木々の葉は、森に日陰をつくり強烈な日光や夏の高温から生き物たちを守ります。
地中深くに張った根は、山の地面を固めて地すべりや山崩れを防いでいます。

葉や根、幹には多くの水分が含まれています。この機能は地球上の水分を蓄えておく役割も担っています。

植物が行う「光合成」は、空気中の二酸化炭素を生き物の呼吸に必要な酸素に変える役割も持っています。

二酸化炭素は「地球温暖化」の原因のひとつにもなっていますね。

こうして、植物はいろんな生き物たちの命を育んでいるんです!

幹や枝の構造

薪の断面

植物は、おもに葉っぱの「葉緑体」(緑色の部分)で光合成を行います。(草花や一部の木では、茎や幹でも行っている。)

で、樹液が出る幹や枝はどんな構造をしているのか気になりませんか?

木の中心近くは死んだ細胞

木の断面図イラスト

樹木は外側から下のような構造になっています。

樹皮

辺材(篩部)

維管束形成層(単に「形成層」とも)

心材(木部)

髄(ずい)

樹木の幹や枝は芯から外側に向かって成長して太くなっていきます。
よく木材として利用される部分は「心材」と呼ばれる部分。
実はこの部分の細胞は古くなった細胞で、死んで固くなったものです。

外側の「辺材」の部分は生きた細胞が混ざっています。

「辺材」「心材」の部分のほとんどは

セルロース(ブドウ糖がつながったもの)
ヘミセルロース(その他の糖がつながったもの)
リグニン(細胞同士をつなげる接着の役割)

でできています。

これらが強固に結びつくことによって、樹全体を支える柱の役割をしているんですね。

篩管(しかん)と導管(どうかん)、維管束(いかんそく)

幹や枝が大きくなるためには、その材料である「糖」が必要ですね。

植物は「光合成」によって糖をつくっています。
光合成は主に葉で行われます。
糖を幹や根に送るのが・・・

「篩管」(しかん)

光合成には「水」が必要。
水は植物の根から吸収されます。
根から水や微量栄養素を葉に送るのが・・・

「導管」(道管)

2つを含めて・・・

「維管束」(いかんそく)

っていいます。
それらを放射状につないでいるのが形成層です。
この形成層が幹を太くする部分ですね。

だんだん理科の授業のようになってきてしまいましたね。

導管や篩管は動物の血管のようなもの!

とおぼえておきましょう。

そう、篩管に流れているのは




栄養たっぷりの「糖分」

やっと本題に近づいてきましたね。

樹液って何なの?

樹液がしみ出る木

樹液は、樹の樹皮が傷つけられ、さらにその傷が篩管・導管をまとめる維管束まで達すると多く出てきます。

さらに樹木には、さきほど紹介した篩管・導管の他に、

乳管(ゴムやウルシなどにも利用される)
樹脂道(防腐作用のある物質も含まれる)

という分泌組織が発達しています。

樹液は、篩管液・導管液・乳状の液体・樹脂が混ざっているものです。

中にはそれらに含まれる物質が、乾燥や化学変化によって、樹脂のもとになったり、脂(ヤニ)として、傷口を固める作用があったりするものもありますね。

「天然樹脂」という言葉を耳にしたことはありませんか?
実は水に溶けない、不揮発性の成分が固まったもののことを言います。

松脂(マツヤニ)・天然ゴム・漆(ウルシ)・・・など工業製品の原料としても使われていますよ!天然ゴムの原料を採集天然ゴムを採集しているところ↑

木に傷がつくと、樹木の大事な篩管液(光合成で作られた糖を含む)と導管液(地中から吸収したミネラルを含む)が出ます。

乳管液や樹脂は、傷を塞ぐのに役立ったり、虫や菌の侵入を防ぐ役割があると考えられますね。

昆虫がくる樹液の成分

 

糖分・タンパク質・酢酸・エタノール………他。

光合成によって作られる糖分
これらが微生物によって発酵すると酢酸・アルコールが生成されます。

雑木林のあの甘酸っぱい独特の樹液のニオイは、酢酸とアルコールの混ざったニオイだったんですね。

樹液がでる仕組み

樹液の虫たち

カブトムシやクワガタが集まる樹液酒場。
だれが、どうやって開拓しているのでしょう?

実は、これも「食物網」の中で繰り広げられているのです。

昆虫が集まる樹液酒場

昆虫が集まる木として有名なのはクヌギやコナラが有名ですが、ヤナギやニレの木、栗の木なども樹液を出す木として知られています。

サクラの木も樹液が出ているのを見かけますが、粘度が高く、ゴム状に固まりやすいので、樹液目当ての昆虫は集まりにくいです。

では、クヌギやコナラの樹液酒場はどうやって開かれるのでしょうか?

実は樹液は勝手に出てくるわけではないんですね。

ボクトウガ

蛾のイラスト

ボクトウガという蛾の幼虫。
クヌギやコナラの木の中にトンネルを作って生活しています。
このボクトウガの幼虫は「肉食」なんです。

で、作戦がすごい!

幼虫が木の形成層までトンネルを掘る

樹液が出る!

昆虫が集まる。

集まってきた昆虫、産卵された幼虫などを捕食!

樹液に集まるのはカブトムシなどの甲虫だけじゃなく、コバエや小型の昆虫も寄ってきます。
コバエはその近くに産卵するとウジ虫が発生します。
ボクトウガの幼虫はこれらをエサにしているのです。

カミキリムシ

シロスジカミキリのペア

シロスジカミキリという日本では大きい種類のカミキリムシ。
雑木林でよく見かけるミヤマカミキリ
これらは、クヌギやコナラを好んで産卵します。

カミキリムシの幼虫は、「テッポウムシ」といわれます。
木材を弾丸が通り過ぎたように食い進むからです。

このカミキリムシの幼虫も木の形成層を傷つけることで樹液を出すことに貢献しています。

スズメバチ

木をかじるスズメバチ

昆虫採集に雑木林に入るとよく見かけます。
樹液を食べに来ているのもいますが、なぜだか樹皮をひたすらかじり続けるスズメバチを見かけます。

実際に樹液を出すためにかじっているのかはわかりません。

動物

クマのツメ

東北で見かけたのですが、樹皮に残る4本の爪痕。
ツキノワグマでしょうか?

その木は樹皮の薄いブナの木でした。
傷が形成層に達していれば、樹液がでる可能性があります。

注意!
たまに人為的にナタで樹皮を傷つけていたり、ドリルで穴を開けられていたりする木を見かけます。
たぶん樹液を出そうとしているのでしょう。
この行為は完全な自然破壊です。
自分の敷地内なら別ですが、そのような行為は絶対にしないでくださいね。
こんな本もおすすめです。クワガタなど身近な生物でみる「生物多様性」の話。
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樹液酒場は意外と少ない。

 

クヌギの樹皮

雑木林に行ったことがある人はご存知かもしれませんが、意外に樹液が出ている木って少ないんです。

それもそのはず、

クヌギやコナラの樹皮って堅い!

樹皮の薄い木も樹液を出しますが、そういう木は補修能力も高く、すぐに樹液の滲出は止まります。

樹皮の堅いクヌギやコナラは一度樹液を出すと、そのシーズンぐらいは出し続けることも多いです。

樹皮が堅いってことは、防御力が高い!
ボクトウガもカミキリムシも産卵しにくいのです。

とくに樹液は篩管液と道管液の混ざったもの。
光合成と根からの吸収がさかんに行われていないと樹液の出る量も少ないのです。

ってことは、若い木のほうがたくさん出る!ってこと。
でも若い木がまず少ないのと、あったとしても若い木は防御力が高いんですね。

さらに、最近ではカミキリムシの幼虫は「テッポウムシ」と呼ばれ、害虫扱いされています。
環境の変化でボクトウガも生息しにくくなっています。樹液を出す役目の生き物が少なくなっています。

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鼻・耳・目で樹液場をみつける!

五感イラスト

ニオイ!
酸っぱい。
発酵臭。
木の腐ったようなニオイ。

耳を澄まして音を聴く!
チョウや蛾、カナブンの羽音を聞き逃さない。
静かな林の中では、木から「シュワ~」っていう音。

こんなところを探せ!
樹皮が剥がれたところ。
木が曲がりくねったところ。
二股に分かれているところ。
(太くて直線的な木は樹液がでにくい)
昔に切断された跡。ウロ(洞)

何度も足を運んで地形や樹液が出そうな木を見つけておくことも大事です。

ポイントは、木の上の方に多い!こと。
クヌギやナラの樹皮はコルク層が重なるように太くなっていきます。
ってことは、下部の幹はコルク層が厚く、形成層まで傷が到達しづらいということ。(古い台場クヌギなどは幹側でもでやすい)
枝の方だと樹皮が薄いので樹液も出やすいのです。
古い木よりも若い木の方が樹皮も薄く、光合成・根からの吸収も活発なので、樹液もおいしい?!

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カブトムシ対クワガタ

人も樹液を生活に利用している。

コハク↑琥珀(コハク)は装飾物にもよく使われています。

樹液を生活に利用しているのは、ムシだけじゃない!
実は人も森のめぐみである樹液を生活に役立てているのです。

天然樹脂

バイオリンの弦に使う松脂↑バイオリンの弦に滑り止めとしてつかう松ヤニ

有名なところでは、天然ゴム、松ヤニ、ウルシ(漆)、琥珀(コハク)などが利用されています。

樹液を単純に乾燥させたり、有機溶媒で溶かしてから溶媒を揮発させる、また熱で溶かして整形して使ったり。

いろんな場面で工業製品として使われています。
私たちが誕生日ケーキで使う「ろうそく」の蝋も実は「ハゼノキ」や「ウルシ」の樹液から作られたものなんですよ!

塗料や接着剤の材料としてもよく使われています。

メープルシロップ

メープルシロップ

ホットケーキにかけるあれ!
メープルシロップ」はカエデの樹液を濃縮させてつくります。
光合成で作られた「ショ糖」がおもな成分。
「ハチミツ」よりもカルシウムやカリウム、マンガン、亜鉛が豊富に含まれているんです。

メープルシロップの採取メープルシロップの採取↑

飲料水

シラカバの林

北海道のシラカバの樹液は飲料としても利用されています。
採れるのは雪解けから葉ができるまでの約1ヶ月の間だけ。

雪解けの水をシラカバの根は勢いよく吸い上げている時期です。
このときに導管にホースを差し込み、採取します。

ほのかに甘く、そのまま飲料としても、料理に利用してもおいしいと評判です。
美容にもいいといわれていますね。

化粧水

化粧水

シラカバやブドウの木から採れる樹液は、化粧水としても利用されています。

天然由来の糖分やミネラル、アミノ酸が肌の美容と健康にいい化粧水として使われています。

最後に。

雑木林

樹液。意外と奥が深いですね。

植物は、光合成を行うことでいろいろな生物の命を支えています。
ただし、現代では自然の雑木林の環境が失われつつあります。

その結果、生活の中で出会うムシたちの数もずいぶんと少なくなりました。

そうすると、虫たちを捕食している鳥たち、両生類、爬虫類の姿も見かけなくなっていきます。

都市部では大きめの公園でまだ生息している生き物たちも、生息環境が周囲と断絶してしまうと、少しの環境変化で絶滅してしまうこともあります。

人間の生活によって絶滅する種を少しでも減らすためには、その種だけを保護するのではなく、植物を含めた「食物網」に目を向けることが必要です。

まずは、その地域に自生する植物を大切にする!
そこからはじめてみませんか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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